2015-01-01から1年間の記事一覧

或る休日と廃校のグラウンド

朝、家を出た。副都心線に乗って、千川駅で降りる。この駅は初めて降りる。豊島区旧第十中学校校庭を目指して歩く。迷うかなと思って携帯の画面に道順の案内を表示しておいたが、周りの人が明らかにそこに向かって歩いていたので、なんなく着いてしまう。追…

「阿漕」と絶望、または、ムンクの「叫び」

最近、書くことが能の関係に偏っているが、別に能ばかり見に行っているわけではなく、それ以外のものも見に行っているのだが、書こうとするとなぜか能の舞台のことになってしまう。これは、恐らくバイオリズムのようなもので、たまたま能を見ると反応する何…

仮面と光、または、とある能楽堂の午後の出来事

能評家の村上湛が今月の観世会の小冊子に掲載されている小文で少し触れているように、能楽堂が明治以降建物の中に取り込まれたことで達成した演技の精緻化には驚くべきものがある。本当にいい舞台にめぐり合えたときの、この瞬間が凍結されたまま永遠に続く…

原典と模倣の間にあるもの、または、日本のオリジナリティについて

NHKのクラシック番組の「らららクラシック」を見ていたら、武満徹の合唱曲が取上げられていて、ゲストで来ていた“あまちゃん”の大友良英さんが、武満徹の音楽はクラシックやジャズや日本の古典楽曲や流行歌などあらゆるものが武満徹という人間のなかで混…

時代劇と歌舞伎の間−明治座五月花形歌舞伎公演『男の花道』を観て

明治座五月花形歌舞伎公演をブログやSNSに感想を書くと、プログラムと昼食付きでチケット代も割安になるという大変お得なセットで観に行きました。とても、いい企画だと思います。明治座だけでなく、他の劇場でもぜひやってほしいです。 さて、猿之助さん…

一を聞いて十を知る: 四月大阪文楽公演「熊谷陣屋」を観て

大阪まで二代目吉田玉男襲名披露公演を観に行ってきた。襲名の演目は「熊谷陣屋」。文楽でも歌舞伎でもとてもポピュラーな演目だし、文楽なら先代玉男の舞台、歌舞伎なら吉右衛門の歌舞伎座さよなら公演など、名演も数多い。そういう「これ観るの何回目かな…