2007-11-01から1ヶ月間の記事一覧

ニューヨークシティバレエとバランシン

日本でのバレエの公演は基本的に2つのパターンがあります。一つはバレエ団によるストーリーバレエ(チャイコフスキーの三大バレエが典型)の上演で、もう一つはスーパースターの名前を冠した見取り(歌舞伎用語で、要するに「いいとこどり」ということ)公…

ヤンソンスと柔道家

大阪のフェスティバルホールでヤンソンスの指揮するバイエルン放送交響楽団でブラームスの1番を聴く。2日前に急に東京への出張が入ってしまい行くのをあきらめかけたのだが、新幹線の自由席でかけつけ何とか後半だけ聞くことができた。そして堪能。満員立…

曽根崎心中と「立迷ふ」男

国立文楽劇場11月文楽公演「吉田玉男一周忌追善」で「曽根崎心中」を見る。「曽根崎心中」は、近松門左衛門51歳の作で、後に世話物と呼ばれることになる一連の作品の記念すべき第1作である。因みに、世話物というのは要するに江戸時代における現代劇で、…

富樫は知っていたのだろうか?

能「安宅」を見る。安宅は、能面を用いずに素面で演じる直面(ひためん)ものの代表曲であり、かつ、歌舞伎十八番のうちの「勧進帳」の元となった演目としても知られている。歌舞伎の「勧進帳」の成立については、ちくま新書の渡辺保『勧進帳』の記述が簡潔…

タルコフスキーとオペラ

古典芸能は予習が大切。これは私の観劇上の第一のモットーである。それでは何が古典なのか、というのは、実は考え始めるとかなりややこしい話なのだが、ここではとりあえず、不特定多数の個人または集団によって、再三再度上演されることが演じるほうにも、…

数独とSUDOKUとCool Japan

これもまた昔話。私は飛行機や電車で移動する際には、文庫本や新書のほかにペンシルパズルの本を一冊持っていくことにしている。乗継などで時間があいて、しかもどうも本を読む気にならないとき、パズル本は最高の時間つぶしになる。ペンシルパズルには、数…

ヴェルディの胸像は何を見ているのか

根っからの芝居好きとしては、何か芝居のことも書きたいのだが、このところあまりお芝居やコンサートに行っていないので、書くことがない。というわけで昔話を一つ。ニューヨークのメトロポリタンオペラの地下一階には、オペラの有名な作曲者や歌手をテーマ…

宮大工・松浦さんと軒の反り

松浦昭次『宮大工と歩く千年の古寺』を読む。続けて、『宮大工千年の「手と技」―語りつぎたい、木を生かす日本人の知恵』と『宮大工 千年の知恵―語りつぎたい、日本の心と技と美しさ』も読む。勢いにのって、根来寺に多宝塔を見に行く。うーん、宮大工すげぇ…

渡辺さんとイチロー

渡辺明『頭脳勝負―将棋の世界』を読む。将棋界が渡辺明という稀有の才能を持ちえたことは素直に喜ぶべきことであると思う。 出発点として、本来将棋は棋譜が全てであり、棋譜を見てその意味がわかるというのが至高の境地であることに間違いはない。モーツァ…

内田さんと村上さん

内田樹の『村上春樹にご用心』を読む。書くほうも、読むほうもプロではない私の基本的な読書スタイルは読み飛ばしである。内田氏の書く文章は、速度感がちょうどうまく自分が読む速度に合致しており、さくさくと読める上に、話のとびぐあいも好ましく、かな…

橋本さんと隔靴掻痒

橋本努『自由に生きるとはどういうことか―戦後日本社会論』を読む。見通しがよくて、爽快。取り上げられるのは、順不同で、明日のジョー、オウム真理教、エヴァンゲリオン、尾崎豊、全共闘、大塚久雄、うーん、戦後すぐの自由論者が思いだせん。小泉信三だっ…