数独とSUDOKUとCool Japan

 これもまた昔話。私は飛行機や電車で移動する際には、文庫本や新書のほかにペンシルパズルの本を一冊持っていくことにしている。乗継などで時間があいて、しかもどうも本を読む気にならないとき、パズル本は最高の時間つぶしになる。ペンシルパズルには、数限りない種類があるのだが、ここ最近で最大のヒットといえば1から9までの数字を9×9のますに入れていく数独だろう。数独ナンプレという言い方もある)は、今では、どの新聞や週刊誌にもかならず載っている大ヒットパズルだが、一般に流布するようになったのはそんなに昔のことではない。いまや、日本だけでなく、海外でも広く受け入れられているようで、例えば、米国の空港の売店では、昔はパズル関係の本といえばクロスワードしかなかったが、今では相当な種類のSUDOKU本が売られている。なかにはカックロ(数字の合計をパターンにそって分解して、縦横のマスに入れていくパズル、私はこっちのほうが好み)が売られている場合さえある。

 これは、米国でそれなりにSUDOKUの人気が出てきて、それなりに日本のマンガやアニメがMANGAやANIMEとして流通し、さらにはCool Japanというちょっと恥ずかしい単語が作られたころの話である。そのときたまたま私は、ダラスかアトランタミネアポリスかシカゴの空港(要するに米国内のハブ空港のうちのどれか)のダイナーで、飛行機待ちをしながらニコリのジャイアントパズルを集めた本を解いていた。何を解いていたかははっきり覚えていないが、恐らく、フィルオミノか波及効果のどちらかだったと思う。すると、隣の席にいた白人のおにいちゃんが、いきなり、お前の解いてるのはSUDOKUか、といって話しかけてきた。私が、SUDOKUじゃないけど、同じ会社が作っているパズルだよ、と言うと、いったいどんなパズルなんだ、と聞くので、ルールを簡単に説明してあげた。そうするとそのおにいちゃんは、小さくThat‘s cool.とつぶやいた。こりゃおもしろいや、と思ったので、きみもSUDOKU解くの、と聞くと、最近はまっているんだけど難しくてなかなか解けない、という回答であった。そこで、私はおもむろにそのパズル本の一番後ろの綴じ込みについている25×25の巨大SUDOKUを彼に見せて、俺これ解けるよ、といった。彼は、That’s cooooool!!と叫んだ。それを見て、私は、これが本当のCool Japanっちゅうやつかな、と思ったのだった。